東京工業大学・現職教員向け衛星通信公開講座
〜高等学校普通教科「情報」の授業設計と指導方法〜

担当 松田 稔樹(東京工業大学大学院社会理工学研究科助教授) 波多野和彦(メディア教育開発センター研究開発部助教授      ・東京工業大学教職科目非常勤講師) 協力 東京工業大学教職科目実施検討委員会、教育工学開発センター

本講座開催の趣旨
 ご存じの通り、平成15年度から新しい高等学校学習指導要領が施行され、普通教科 「情報」が必修教科となります。この教科は、新設教科であるため、平成15年までに 教員免許を取得し、授業を担当できる教員を養成しなければなりません。このために、 文部省は、免許認定講習会を開催する予定にしており、平成11年度中に講習会講師を 養成するための講座を実施し、12年度から14年度の間に毎年3千人、合計9千人の教 員を現職教員の中から確保する計画です[文献1]。 もちろん、この他にも、大学の教 職課程で新規に「情報」の免許を取得し、採用される者も出てくると見込まれます。  新教科「情報」に対しては、多くの方が強い期待と関心を寄せている一方、まだ、 学習指導要領が告示されたのみで、具体的なイメージが明確になっておらず、不安や 問題を指摘する声も少なくありません。そこで、東京工業大学の教職課程では、平成 10年度より、将来、「情報科教育法」として開講する予定の教職科目を試行的に開講 し、特に、普通教科「情報」に焦点を当てて、授業を設計し、実施、改善する上で必 要な能力を身につけて頂くための教師教育の在り方を検討しております。  この公開講座は、以上の目的で開講している本学の教職科目「情報教育の内容と方 法」の一部を衛星通信を使って配信し、近い将来行われる情報科の免許認定講習のカ リキュラム開発や実施方法の参考とするために行うものです。より将来的には、教職 課程科目等の科目履修や単位互換などを遠隔教育手段を用いて拡げていくための検討 材料とすることもねらいとしています。したがって、高等学校普通教科「情報」に関 心を持っていらっしゃる多くの現場の先生方や教育委員会・教育センター等の研修担 当者の方々などにより多く受講して頂き、普通教科「情報」のイメージを具体化する 上で活用して頂いたり、今後の研修のあり方等の意見交換の機会、材料にして頂けれ ばと考えています。
講座の学習目標
 本講座に参加し、課題等を実施して頂くことで、以下の学習目標が達成できるよう に計画しています。  (1).高等学校普通教科「情報」の授業イメージを明確にし、学習のねらいや、内容   の取扱い、指導方法の考え方等を理解する。(特に、情報技術の専門家を育成す   るための職業教育としての情報処理教育との違いを明確にすることが重要です。)  (2).上の理解に基づいて、普通教科「情報」の学習目標を生徒達に達成させるため   の学習活動を計画し、その展開に必要な課題設定や教材の準備を行うための手法   を習得する。(特に、施設・設備や学習者の実態等に応じて、授業計画や学習環   境の整備を工夫できるようになることが重要です。その際、教師の負担が過度に   ならないような授業の工夫、学校内外の協力の仕方について考えることも重要で   す。)  (3).実際に普通教科「情報」を担当するためには、さらにどのようなことについて   学んでおく必要があるのか、自己研修を含めた教員研修のあり方について考える。   (教職課程、認定講習のいずれにおいても、限られた時間数の講義・実習しかで   きません。時間が無限にあるなら、何でも学んでおいて損は無いかも知れません   が、限られた時間をできるだけ有効に使って能力を高めるためには、何を、どの   ように学ぶと良いのか、その指針を獲得することが自己学習力として重要です。   本講座は、大学で行っている教職課程の授業と連携しますので、授業を履修して   いる人達の学習成果を見ることも、指針を得る上で役立つと思います。)
日程
[第1回] 8月23日(月) 13:20〜16:30 資料   最初は、基本的に学習指導要領の解説です。しかし、単に学習指導要領を言葉で  説明してもイメージが明確にならないと思いますので、最初に、「情報B」の模擬  授業体験をしてもらいます。これ等は、教職科目「情報教育の内容と方法」で行っ  た第1回及び第2回の授業内容をコンパクトにまとめたようなものです。   その後、上で行った学習指導要領解説をふまえて、「情報B」の他の単元や、  「情報C」の模擬授業体験をしてもらいます。これは、大学の教職科目履修者が、  授業設計や教材開発の方法を学んだ成果を活かして模擬授業するものです。教職科  目の授業は、これまでに9コマ分(約18時限)行ってきたところで、認定講習で言  うと3日分程度に相当します。今のところ、2〜4人に模擬授業をしてもらい、普  通教科「情報」の授業として適切かどうか、教育効果を高めるために、教材や指導  方法に改善すべき点がないかなどを討議する予定です。   なお、この公開講座に参加される方には、「情報B」の教材テキストなど、指導  案作成のための情報や指導案作成環境などを提供しますので、それを用いて次回ま  でに指導案を作成し、電子メールで提出して下さい。 [第2回] 8月27日(金) 13:20〜16:30   前半は、受講者の方から出して頂いた指導案や、こちらで用意した指導案などを  分析対象として、教職科目「情報教育の内容と方法」の履修者に指導案評価、模擬  授業、授業改善の討議などを行ってもらいます。なお、模擬授業や討議は、この公  開講座の授業者にも遠隔から参加してもらうような工夫を検討したいと考えていま  す。   後半は、前半の討議をまとめながら、普通教科「情報」の教材研究や授業設計の  観点、手法を習得してもらいます。   なお、この公開講座に参加される方は、討論や講義をふまえて、提出した指導案  を次回までに改善して、電子メールで提出して下さい。 [第3回] 8月31日(火) 13:20〜16:30 資料   この回までに、大学の教職科目「情報教育の内容と方法」の履修者が、各単元の  学習評価を行うための課題やその課題を用いた評価方法を検討してきます。それら  が、普通教科「情報」や各科目の学習目標に照らして適切なものかどうか、また、  その課題、評価方法で学習評価をする際、情報手段やワークシートなどを適切に活  用して、評価に必要な情報を効率的に、かつ確実に収集することはできないかなど、  指導上の留意点や実習指導の工夫などについて検討します。   なお、実習指導や、情報と社会に関する内容については、教師の関わり方や、準  備が非常に重要になります。そこで、それらの工夫についても検討したいと考えて  います。
履修上の注意事項
 この講座を受講するには、以下の施設・設備が必要となります。  (1).衛星通信受信施設・設備〜国立教育会館がハブ局となっているELネットによ 配信します。受信用設備は各都道府県の教育センターなどに整備されています。 基本的に、家庭用の衛星放送受信設備では受信できませんので、参加は、都道府 県の教育センターなどの単位でお願いします。  (2).インターネットに接続され、本講座受講時にリアルタイムでWWWにアクセス   可能なコンピュータ〜本講座では、インタラクティブに講座を進めるために、リ   アルタイムでWWWにアクセスしてもらい、さまざまなレスポンスを返して頂く   予定です。また、指導案作成や模擬授業などにおいても、コンピュータ上で動作   するシステムなどを利用してもらう予定です。(ELネット受信設備とインター ネット利用可能なパソコン設備とが同じ部屋に無い場合、インターネットによる リアルタイム情報の受発信ができない点を了解の上、受講することは可能です)。  (3).本講座では、模擬授業などにおいて、コンピュータやネットワークを用いた実   習を行ってもらう。したがって、次期中学校学習指導要領の技術・家庭科で扱う   「情報とコンピュータ」に相当する内容程度は、最低限習得していることを前提   とする。特に、表計算ソフトウェアの利用については、基本的な活用ができる必   要がある(この点においても、ELネット受信設備とパソコン設備とが同じ部屋 に無い場合、学習効果が期待できないことが予想されます。できるだけ、ノート パソコンなどを講義室に持ち込んで受講されることを勧めます)。  (4).本講座では、各種のシステムを用いて指導案や教材を作成してもらう。そこで   作成した指導計画や教材、あるいは、本講座の記録などは、全て情報科の教育や   教員研修に利用できるようにする予定である。(つまり、このような公開講座を   行うことで、そのような共有財産を蓄積していくことも、本講座の目的の一つで   ある。)したがって、それ等の共有財産の蓄積に積極的に寄与すること、また、   それ等を高等学校及び「情報」の教員養成の授業で、フリーに利用することに同   意する者のみ本講座の受講を認めるものとする。
参考図書等
1)中村一夫(1999) 情報科の教員養成.日本教育工学会1999年度シンポジウム資料、 23-24 2)文部省(1999) 高等学校学習指導要領. 3)情報化の進展に対応した初等中等教育における情報教育の推進等に関する調査研究 協力者会議(1998) 体系的な情報教育の実施に向けて.文部省 4)坂元昂監修・牟田博光編著(1993) 教育システム工学講座1巻・教育システムの改 善.
問い合わせ・受講受付
 本講座に参加したい基地局の担当者の方は、8月16日(月)までに lecture@hucom.tp.titech.ac.jp  までメールで以下の内容をご連絡下さい。