普通教科「情報」・単元指導計画案
作成者:江本理恵(助言:松田稔樹)
 「情報B」:(1)問題解決とコンピュータの活用
学習指導要領 学習活動の概要 指導上の留意事項
(ア)問題解決における手順とコンピュータの活用: 問題解決においては,解決の手順と用いる手段の違いが結果に影響を与えること及びコンピュータの適切な活用が有効であることを理解させる。

(6時限~ただし最初の2時限はオリエンテーション)

 

【オリエンテーション】(2時限)
・本授業の目標、年間の予定、コンピュータ室利用上の注意事項を説明する。
・基礎知識やパソコンの活用体験について事前調査を行う。本授業としては、キーボードの基本操作と日本語入力、表計算ソフトの基礎知識や活用体験などが重要であるが、他教科での活用に関連するWebや電子メールの活用(Webページの作成を含む)、プレゼンテーションソフトの活用についても調査する。
・表計算ソフトの基本操作(入力、文字列と数式、複写と番地参照、基本的な関数)について説明し、自習用教材の紹介、中間テストまでの課題を説明する。
・本実践は、工業科目「情報技術基礎」の約2/3の時間を使って行った。残りの時間は従来までの内容であるプログラミングを扱った。
・事前調査については、他教科での活用も想定して内容を調整しておく。
【導入実習】(1時限)
・次の「合宿先の予約」課題を提示する。
・部活動の合宿で使用する練習用施設と宿を確保したい。
・下級生に、与えられた候補一覧から施設と宿とを確保する作業をさせたい。そのために必要な作業指示書を作成しなさい。
・施設や宿の空き状況と値段は、電話をして聞くものとする。
・合宿先の決定および日程の決定にあたっては、以下の条件を満たすこと。
条件a:7/20~7/31の間の3泊4日→施設は4日分,宿は3日分
条件b:できるだけ,多くの部員が参加できる
条件c:期間中に施設や宿の移動がないこと
条件d:参加費の合計が25,000円以下で,できるだけ安いこと
条件e:施設と宿の移動時間は10分以内で,近い方がよい.
※なお、部屋割りを考える必要はない
・作業方法を考える際の参考として、施設・宿の具体的な空き状況等の情報例をプリントで渡し、二人一組でロールプレイングしながら手順を考えるよう指示する。
・作業指示書の作成方法を理解させると同時に、一部の情報のみで決定する手順に誘導するため、具体例を示す。
・1時限目の残り時間(15~20分)で,できるだけ良い作業指示書を作ること。
・指示のまとめ方を例示し、できるだけ一般的な良い方法を考えるよう強調する。
・施設,宿の情報はロールプレイングをするための仮の情報であり、実際に電話した時に返ってくる返事がこの通りでなくても作業ができるように、一般的な指示を考えるよう強調する。
・15分は、作業指示書を作るための時間であり、仮のデータから解を見つける必要は無いことを強調する。
・部員の情報は、生徒からの質問を待って渡す。
・コンピュータを使いたい者には自由に使わせる。
【見方・考え方の座学】(2時限)
・ 生徒の多くが「一部の情報で解を決定する方法」をとったのに対して、「解の評価に必要十分な情報を収集し、分析する方法」があることを紹介する。
・その上で、「より良い解決」を考えるための次のような視点を示し、さまざまな解決方法を発想できること、目的や状況に応じて解決を使い分けられることの必要性を解説する。
・ここでは、「全ての情報を収集し、処理して解の候補を評価する方法」を表計算ソフトを用いて教師が演示しながら、以下の形で「情報的な見方・考え方」を示す。
・問題解決にはさまざまな情報が必要である。この場合、施設・宿と部員の都合の情報が必要だった。何が必要な情報かは、自分で考えられる必要がある。
・問題の「条件」と「目標」との区別が必要である。
・問題解決において,「解」の良さと,「解決方法」の良さとを考える必要がある。さらに、それぞれについて多様な良さがある。
・解の良さ(参加者の多さと費用の安さなど)にも、解決方法の良さ(作業の簡単さ、確実に良い解が得られるかどうかなど)にも、良さの間にトレードオフがある。
・解決方法は、情報の収集と処理とに分けて考えると良い。
・より良い解決方法を考えるには、さまざまな方法を発想できる必要がある。たとえば、情報を集める順序や、集めた情報の記録の仕方など、さまざまである。
・一部の情報で解決しようとするのは、コンピュータの活用を考えなかったためである。情報技術の活用を考えることで、解決方法の代替案が広がる。
・解も、解決方法も、どの良さを重視するかで選択が変わってくる(解については、表計算ソフトでの処理結果に基づき例示する)。それ故、意思決定者が、その決定に責任を持つ必要がある。
・一部の情報で解決する方法が悪いのではなく、他の方法も考え、比較検討できなかったことが問題であるという点を強調する。
・表計算ソフトの完成版シートを配布し、残り時間で、宿や施設の情報が変わった時の解の変化の様子を調べさせ、シートの内容を理解させる(この時、変化への対応という点での表計算ソフト活用のメリットも解説する)。あわせて、自分が考えた作業手順が一般的と言えるかどうか、確認させる。
・この場合、部員全体に対する意思決定の責任という観点から、「より良い解に到達すること」「そのために情報技術の活用も考えるべきこと」の必要性を強調する。
【定着実習】(1時限)
・ 次の「ディジカメ購入」課題を提示し、ワークシートにそって作業を進めさせる。
太郎くんの所属するクラブでは,今度の日曜日にディジタルカメラを購入することになりました.部員の意見を採り入れて,購入する機種とそれを買う販売店を決める「手順」を考えてください。(以下の条件をセリフ形式で記述する。)
・実売価格が消費税抜きで5万円以下であり、できるだけ安いもの
・重さは300g以下で、できるだけ軽いもの
・画素数は100万画素以上で、できるだけ高画素数のもの
・オートフォーカス機能が有るもの
・機種および販売店の候補を示し、情報収集の方法として、店に直接行くか、Webで収集するか、理由を考え、判断させる。その際、以下のことを条件とする。
・Webの場合,必ずしも在庫が正確ではない
・店頭の場合,時間制限で4店までしかまわれない(候補6店中、4店目で購入)
・作業を誘導するため、以下の問を設ける。
問1:部員の意見を問題の目標と条件とに分類しながら書き出しなさい。
問2:この問題を解決するのに必要な情報は何でしょうか?
・処理の手段と手順を考えさせ,その方法によればどの販売店でどの機種を買うことになるか、実際に作業させ、結果を確認させる。
・見方・考え方を考慮できたか、理由と判断結果との整合性に着目して評価する。
(イ) コンピュータによる情報処理の特徴: コンピュータを適切に活用する上で知っておくべきコンピュータによる情報処理の長所と短所を理解させる。

(4時間~ただし1時限分は中間テストの返却で、クラスによって時期がズレるため、右の計画には記述しない)

【導入実習】(2時限)
・「与えられた文書中にある文字列がいくつあるか」数える作業を取り上げる。この作業について、パソコン(ワープロソフト)を用いる場合と、用いずに人間が手作業で行う場合とをさまざまな状況下で比較実験する。
・状況1:4~5ページで文字量の多い文書(探す文字列は出現頻度の多いものとする)
・状況2:図中に文字列が出現したり,単語の間に改行コードが入っている場合など,単純なワープロの機能では検索できない文書(探す文字列は出現頻度の低いものとする)
・自動翻訳ソフトを使って,英語→日本語,日本語→英語を実演する.
同じ意味だが,英語に直りやすい文章と直りにくい(助詞などが省かれている)文章を比較
・データを入力する方法として,キーボード,手書き文字入力,携帯電話の入力などを体験し,それらに共通している特徴を考える

・この回は、実験やデモによって事実認識をすることに重点を置き、技術的な内容(解説)には深入りしない。
・ワープロを使わない時は紙の上で探索する。

・あまり長かったり難しい英文だと,正しく翻訳されたのか,誤訳なのか,が生徒が判別できない

【見方・考え方の座学】(1時限)
・導入実習の結果を振り返りながら、以下の情報的な見方・考え方を解説する。
・情報技術は道具であり、その活用を目的化すべきではない(問題解決の目的と方法とを混同しない)
・人間が得意な作業と、コンピュータが得意な作業とがある(作業には、速さや正確さも大事だが、状況に応じた柔軟性も重要である)
・曖昧な情報の解釈をコンピュータに一意に決定させることは、危険を伴う可能性がある(人間が最終的に判断し、責任を持つ必要がある)
・コンピュータを効果的に活用して解決方法を工夫するには、処理しやすいように情報を入力(表現)しておくことが重要であり、また、正確かつ効率的に情報を入力する工夫が必要である
・状況によっては情報技術の活用が問題解決に有効な場合がある(したがって、その効果的な活用を代替案として考えることが大事である)
・同じ処理を行うにも、さまざまな情報技術があり、重視する「良さ」に応じて選択する必要がある
・「情報技術を活用する/しない」を判断する権利も責任も人間にある
・人間が情報技術の長所を活かし、短所を補う形で活用することが重要
・技術に完全は無い(情報技術に依存しすぎることは適切ではない)
・「情報技術に可能なこと=人間が定式化できたこと」である
・情報を一意に特定できないと,入力情報を確定できない.

・現在は、コンピュータに柔軟性を求める方法ではなく、人間が入力情報をできるだけ特定できる方法が主流になっている
※時間配分は、学習指導要領に記述されている情報ではなく、計画立案者の実施計画案である。